このページでは耳鼻科のドクター向けに、LED関連の自作機材を4つ紹介いたします。
これらの機材は当院で使用しているものです(※一部終了したものを含みます)。
詳しくお知りになりたい先生は当院まで電話でお問い合わせください。
なお、自作はご自身が責任のもてる範囲内でお願いいたします。
1.明るい白色LED耳鏡の自作
常々LED方式の明るい耳鏡を探しておりましたが本格的なものがなかなか見つからず、
古いハロゲン耳鏡に思い切って手を加え、LED化して1年ほど使用しておりました。
最近マクロビューのヘッドのみを購入し、LED耳鏡としてバージョンアップし、
さらに見やすいものになりましたので、ご紹介いたします。
マクロビュー白色LED耳鏡
点灯した状態です。直視するとかなり眩しく感じます。ニッケル水素電池を組み込んでおり、
フル充電では30時間を超える連続点灯が可能です。このため、通常の使用条件では充電は
1ヶ月にわずか数回で済みます。
LED耳鏡とハロゲン耳鏡との比較
オレンジ色のハロゲン光源と比べ、LEDでは光の色が青みがかった白色になっています。
LEDでは長時間点灯してもほとんど熱くならず、エネルギー効率が極めて良いことがわかります。
ハンドル部はプラスチック製で従来のものより短く、軽量になっていています。
透明カバーはスプレーボトルを切ってはめ込んだだけですが、簡単には抜け落ちません。
カバーの内側に白いフィルムを巻いていますが、黒のほうが見栄えが良いかもしれません。
上は従来のハロゲン耳鏡で、ハンドル部には3.6Vのニッカド電池が入っています。
これまでの電球とニッカド電池の組み合わせでは、毎日充電する必要がありましたが、
LEDとニッケル水素電池のおかげで充電の手間が省け、予備の充電池も不要となりました。
これよりハロゲン耳鏡をLED化する方法について解説いたします。
リードフレーム(砲弾形LEDの足)の加工
まず電球ソケットの形に合わせてリードを曲げておきます。リードにはある程度弾力を
持たせソケット内でがたつかないようにします。極性に注意します。足の長い方が+です。
LEDは、日亜化学製のNSPW500GS-K1 b2Wです。この超高輝度白色LEDは旧型の2倍明るく、
砲弾形LEDでは現在世界で最も明るく、高品質とされています。とはいえ価格はそれほど
高くはなく、1個あたり240円ほどで、耳鏡専用ハロゲン電球の15分の1以下です。
また、電球は時々切れますが、LEDはその寿命から考えてまず切れることはないので
一層経済的といえます。万一に備えるとしても、替え球が1個あれば十分でしょう。
LEDの装着法
耳鏡ヘッドのハロゲン電球を取り出し、超高輝度白色LEDをソケットに差し込みます。
なおこの白色LEDは、従来の電源電圧3.6Vでは電圧不足で十分発光しません。このため
1.2Vの充電池を4本直列に並べて4.8Vとし、51Ωの電流制限用抵抗を組み込んだものを
電池ハンドルとして新たに自作する必要がありました。この条件下では、LEDに流れる
電流は計算上定格よりやや多い31mAとなります。
耳鏡にセットした単4形充電池
電源部はこのようになっています。電池ホルダーが見えています。裏側にも2本電池があります。
4本直列で4.8Vを出力しています。LEDとの間に51Ωの抵抗を直列に組み込んでいます。
マクロビューのヘッド本体は電球をLEDに交換しただけで、改造しておりません。電池はエネループ
専用の充電器で充電します。なお、この回路で1.5Vの乾電池を使用すると、LEDはすぐに破壊されます。
充電池1個の容量が800mAhですので、総容量は3200mAhとなります。これを電流量31mAで割ると
103.2時間となります。単純計算だと、フル充電ならまるまる4日間以上の連続点灯が可能という
ことになります。ただし、点灯時間が30時間を超えると電圧が降下して明るさが落ち始めるので、
実用的な使用可能時間は30時間です。診察のために点灯する時間は1日あたり1時間程でしょうから、
過放電のリスクを考慮に入れても、充電は1ヶ月に1回も行えば十分であることがわかります。
ハロゲン耳鏡の常識を覆す、使い勝手の良さといえます。
エネループ充電池は1500回充放電ができ、メモリー効果が少なく、自己放電が抑えられていて
長期間使用していなくても消耗しにくい、環境に優しい等、数々の利点があります。
メーカー製の携帯型医療用照明器具も、次第にLEDとニッケル水素電池の組み合わせに代わって
ゆくことでしょう。
2.ルミビューLEDヘッドライト用バッテリーパックの自作
純正の充電機能付きのバッテリーパックは高価な上に、ポケットに入れると重くて非常に
かさばるため、充電機能を省いたコンパクトなものを自作しました。費用は2000円以下で
経済的でもあります。こまめに消して電池の持ちを良くするためのスイッチ付きです。
※汎用市販品へ更新済みのため、現在は使用終了。
ルミビュー用の自作バッテリーパック
左が従来のバッテリーパックで、右が自作したものです。自作のものでも従来と同様に
フル充電で60名程度の診察・処置に使えます。ヘッドライト本体の改造は不要でした。
胸ポケットに入れてもかさばらない大きさ
電池ケースは180円程ですが、十分丈夫です。ルミビューLEDヘッドライトは消費電力が多く、
容量の大きいエネループ充電池を利用してもまる1日は持ちませんので、充電池は少なくとも
2セット用意し、交替で使用します。専用のバッテリーパックは1個4万円近くと非常に高価
にもかかわらず、旧来のニッカド電池を使用しています。ニッカド電池は継ぎ足し充電を
反復するとメモリー効果のために容量が低下し、本来の寿命より早めの買い換えが必要になります。
一方、エネループではこの効果は少なく、継ぎ足し充電しても電池の寿命にあまり影響しません。
継ぎ足し充電を繰り返す使用条件には、うってつけの充電池といえます。
電池ボックスについていた接続端子がUSBでしたので、ルミビューの電源コードを途中で切断し、
USB用に加工してあります。電池ケース内にスイッチとダイオードが直列になった回路がありますが、
テスト通電中にダイオードのみ過熱しましたので、これをパスする配線を加えてあります。
全部で4セット制作し、電池が切れたら素早く交換できるようにしました。簡単なクリップもついており、
ベルトに固定することもできます。
単3形ニッケル水素電池を4本使用
電池4本直列で4.8Vを出力しています。LEDヘッドライトの内部には既に抵抗または定電流ダイオードが
組み込まれているらしく、電流制限用の抵抗は不要でした。充電池は入手しやすく、4本で1480円です。
カバーは脱着可能で電池交換は簡単に行えます。電池も何組か準備しておくと長時間使用もできます。
単3形エネループの場合、単4形より充電時間が長くなりがちなので、専用の急速充電器で充電します。
※白色LEDの発光スペクトルについて
LEDから出る白色光には青みがあり、粘膜や鼓膜を照らすと白熱灯で照らした場合に比べて不自然な色合いに
見えてしまいます。最初は戸惑いますが、目が慣れると白熱灯で照らすよりも、粘膜や鼓膜の色調のわずかな
変化を意外にとらえやすいことに気がつきます。当院が観察光源のLED化を進める理由のひとつです。実際、
鼓膜を白色LEDの光で観察していると中耳の液貯留が良く見えるため、ティンパノメトリー検査の頻度が
以前よりはるかに少なくなりました(キセノン白色光源下でも観察しております)。
粘膜や鼓膜の色調の変化は、主にそこを流れる血液の多寡ないし血流の見えやすさによります。LEDからの
白色光は青みが強いので、肌を照らすとまるでチアノーゼがあるかの様に色悪くみえてしまいます。しかし
同じ白色光でもキセノン光源ならそうはなりません。これは、ヘモグロビンがLEDからの光をより吸収しやすい
ためと考えられます。ヘモグロビンに吸収されやすい光で観察したほうが色調の変化をとらえやすいという
理屈はNBIの原理と同じになります。白色LED下での観察はNBIを地でいっているのでしょうか。
さて、日亜化学の仕様書を見ると、白色LEDの発光スペクトル特性はヘモグロビンの吸光特性と良く似ており、
これをうまく利用すると、NBIの光源として利用できそうです。(株)オリンパスはこれに気づいて
いるためでしょうか、LEDを内視鏡の光源として用いる特許を取って、研究開発を行っているようです。
※モバイルバッテリーの流用について
2012年になってスマートホンやiPad用の大容量・高出力な携帯用充電バッテリーが各種出回るようになりました。
昨年まではUSB端子からの出力が5V1Aで、容量も5000mAhまでのものばかりでしたが、今年は出力5V2.1Aで、
容量が10000mAh以上のものが主流となっています。ようやく、上記でUSB化したヘッドライトのバッテリーとして
そのまま使えそうなものが現れたと考えておりました。そこで以前から気になっていた、cheero Power Plus
という機種の、年末に発売されたばかりのホワイトバージョンを購入し、実際に外来診療で使用してみました。
価格は1台2500円のものを4台分、送料込みで10,300円でした。重量は260gで上記の自作バッテリーパック
よりも100g程重くなりますが、胸ポケットに丁度納まるサイズでした。エネループのようなニッケル水素電池
ではなく、デジタルカメラやビデオカメラに使われているものと同じリチウムイオンタイプのバッテリーです。
容量は10000mAhありますので、5Wのルミビューヘッドライトを1時間半程連続使用できる計算になります。
さてその使用感ですが、安定していて長持ちするという印象です。5段階のLEDランプで残量も確認できます。
50〜60人の診察後に1目盛り減ったので、満充電では200人以上の診察が可能です。パソコンのUSB端子に接続して
充電したところ、2時間程で残量が1目盛り増えたので、ゼロからの満充電では10時間ほどかかります。容量に
比例して重量と充電時間が若干多くなるのは仕方ありません。コンセントからの充電だと、別途USB充電アダプター
が必要ですが、充電時間は短縮できる様です。トータルで考えると、安価な割には信頼性が高いと考えられます。
なお、仕様上の充放電可能回数は500回です。
純正のバッテリーパックの価格は現在でも1台4〜5万円するので、汎用品なら同じ費用で16〜20台も買えて
しまいます。恐るべきコストパフォーマンスです。むしろ、純正品が単に医療用というだけで極めて高い値付けが
されていることのほうが逆に異常なのでしょう。性能が仕様書通りなら、純正品を買う理由はほぼなくなったと
いえます。2500円という価格では、もはや自作する意味さえなくなったと思います(2012年12月30日)。
※3年間ほど4台のcheero Power Plusを使用し続けた結果、バッテリー容量が低下し使用時間が短縮したため、
2016年4月、後継機種のcheero Power Plus 3 4台に買い換えました。価格は1台2980円でした。容量が
13400mAhとアップしたにもかかわらず、サイズは小型化されています。重さも245gと軽量化され、
胸ポケットにすっぽり収まり、違和感なく使用可能です。わずか数年でも技術の進歩を感じます。
3.フレンツェル眼鏡のコードレスLED化
長く使用したフレンツェル眼鏡をLED化してみました。同様のものは既に永島医科機械から
市販されていますが、手持ちのものがまだ十分使えるため、手軽にコードレスかつLED化できれば
と考案しました。耐久性と操作性を考え、市販の金属製プッシュボタン付きライトを流用しています。
もとはは3色(3個)のLEDが交互に発光するキーライトでしたが、高品質な日亜化学製の白色LED
NSPW500GS-K1 b2W 1個に変更し、内部の回路に少し手を加えてあります。
※赤外線CCDフレンツェル眼鏡に更新したため、2015年6月以降使用終了。
LED化フレンツェル眼鏡・表面
このように加工したキーライトを、豆電球が装着されていたフレンツェル眼鏡の左右の穴に、
パッキンをはさみながら強く押し込んでしっかり固定し、容易には抜けないようにしてあります。
電池は1.5ボルトのアルカリボタン電池(LR41型)を左右に3個づつ使用します。電池交換は
お尻のネジキャップを外して容易に行えます。電池の持ちは7時間程と見込まれます。
LED化フレンツェル眼鏡・裏面
裏から見たところです。豆電球があった場所に白色LEDが光っています。LEDの頭には
光を拡散させるため、ゴムキャップを被せています。調光はできませんが明るさは十分です。
キーライト部分がかなり左右に出っ張っていますが、使用中検査の妨げにはなりませんでした。
材料費はキーライト(電池込み)2個210円、LED2個480円、およびゴムキャップ2個
104円の計794円です。これでコードレスになって検査中の取り回しが楽になりました。
4.ファイバースコープ用LED光源ユニット
これまでファイバースコープと鼓膜鏡の光源にはキセノンランプを使用しておりましたが
ランプが高価(4〜5万)な割には球切れが多く、コストがかかって困っておりました。
昨年(2009年)より長寿命の産業用LED光源装置が幾つかのメーカーから発売されており、
これを医療用ファイバースコープの光源として転用できるのではと考えました。
産業用LED光源ユニット
今回はトキナーの新製品を用いました。価格は89,250円で、キセノン光源の3分の1以下でした。
55Wでも150Wキセノンに匹敵する光量をもち、点灯させるとプロジェクターの様です。
ただ、光導出部が産業用ライトガイド規格(ファイバーバンドル径8mm、口金径15mm)のため、
オリンパス規格(バンドル径2mm、口金径10mm)の医療用ライトガイドには合わず、そのままでは
利用できませんでした。
非球面レンズ・固定用リングとパイプ 組み込み後の使用状態
そこで手持ちの非球面レンズを本体に組み込んで光を径2.5mmまで収束させ、さらに市販の塩ビ
パイプで口金サイズを調整して焦点がライトガイドの光導入部に正しく当たる様にしたところ、
実用上十分な光量が得られることがわかりました。これまで使用してきたキセノン光源に比べて
光量では少し劣りますが、白色LED光で観察すると咽喉頭粘膜の僅かな色調変化や微細な血管の
走行がコントラスト良く観察でき、有用であることを再確認しました。また、キセノン光源では
スイッチオンからフル発光まで十数秒かかりますが、LEDでは瞬時に最高輝度になる点、さらに
キセノンはオンオフを頻回に繰り返すと寿命が著しく短くなるのに対し、LEDでは元々の寿命が長く、
オンオフを繰り返しても寿命に影響がない点で優れているといえます。現時点(2010年3月)で
このような医療用の光源ユニットは国内では市販されておらず、当方で自作するに至りました。
これでランプ交換のコストと煩わしさ、いつ切れるかわからない心配からすっかり解放されました。
※つい最近、永島医科器械からLED光源装置が発売開始されたようです(2011年6月)。
※医療機器メーカーやドクターからのお問い合わせを数件頂いております(2011年8月)。
5.おまけその1
当院では、CRの患者ID入力にキーボードを使用せず、ソフトウェアキーボードとマウスのみで
行っております。Windows附属のソフトウェアキーボードは大きくて画面の邪魔になるため、
Piggy Software Keyboardというフリーソフト用にテンキーのみの小さなスキンを自作し、
カスタマイズして使用しております。右下の剳舶ェをドラッグすれば、サイズを縦横とも
自由に変更できて重宝します(2012年10月)。
※これをクリックすると、元画像が別のタブに表示されます。右クリックでコピーし、
Piggy Software Keyboardのskinフォルダ内にペーストすれば、使用できます。
なお、使用に関しては自己責任でお願いします(2013年6月)。
5.おまけその2
当院マスコットキャラクター”みみちゃん”(豆柴犬)のマウスポインタを4つ作成しました。
Windows標準のマウスポインタより大きく目立つので、使いやすいです。当院では患者さんへの
モニタ供覧に使用しております。リンクを右クリックしてCドライブWindowsフォルダ内の
Cursorsフォルダにコピーした後、Windowsの設定でマウスのプロパティ内でポインタを
カスタマイズすれば使用できるようになります。なお、使用に関しては自己責任でお願いします(2016年8月)。
みみちゃんポインタ: 通常の選択
みみちゃんポインタ: バックグラウンドで作業中
みみちゃんポインタ: 待ち状態
みみちゃんポインタ: リンク選択